【第一章】 シャイロックの森 ■忍び寄る魔の手 Click Here ■怪しい森・シャイロック Click Here ■正義の騎士 ガンバルジャン登場!Click Here ■人の恋路を邪魔する者は・・・・・ Click Here |
||
【第一章】 シャイロックの森
■忍び寄る魔の手 |
||
アチャラカ城にほど近いシャイロックの森の奧から、悲鳴が上がった。 ナノヨ姫 『助けて〜!!』 つい先ほど、痛烈な一言をあびせられて別れたガンバルジャンには、 ナノヨ姫 『何をする気なのよ! 名を名乗れ!!』 妙な具合になって来た。姫の甘い言葉に、バーカもたじたじ……… バーカ 『俺の言うとおりにするってえわけか?』 月明かりの中、不覚にもバーカは頬を紅潮させ、デレデレーッと、 パーカ 『おっと危ねぇ〜! 騙されるところだった! こっちへ来やがれ!』 ナノヨ姫が危ない。“ガンバルジャンは、何をしているのかしら”と、思ったその時、 ノンキホーテー 『だんな様、おいらもその馬に乗せておくんなせえよ』 ノンキホーテーは、出る幕が無いとさとり、草むらに寝そべってしまった。 ナノヨ姫 『ガンバルジャンは、どうしたのかしら。充分にスリルは味わったわ。 バーカはナノヨ姫にじりじりと迫る。王国の危機と言っても過言ではない。 |
||
■怪しい森・シャイロック | ||
笹藪で鬱蒼としたシャイロックの森は、怪しい輩達の巣窟となっていた。 オカーマ 『けっけっけっ、ベラベラベラ。可愛い女、こっちへ逃げておいで。』 もうひとりの輩は、真っ赤に充血した目を落ち着きなく動かし、イボだらけの キンタマリーア 『うはうはうは、久し振りに娘の生血を味わえるわい。 背後に迫る悪党どもを知らずに「バーカ」の手から逃れようとする「ナノヨ姫」 ナノヨ姫 『これ、バーカちゃん、月がとっても綺麗で、ロマンチックじゃないこと?』 キンタマリーア 『うはうはうは、来た来た来た、さあもっと近くに来い。』 前門の虎・後門の狼である。と、その時、馬鹿なポーズをとらされていた「バーカ」が バーカ 『う〜ん、騙された!ナノヨ姫はどこに隠れた!もう我慢出来ない。見つけだして 逃げ回る「ナノヨ姫」。しかし、そこには「オカーマ」と「キンタマリーア」が…… オカーマ 『ベラベラベラ、そ〜ら来た。』 月明かりを背に迫る「バーカ」。大きく開いた口から真っ赤な舌がのぞいている。 ナノヨ姫 『やめてよ!気安く触らないでっ!』 首筋に手をかけ、「バーカ」は手前に引き寄せようとした。 バーカ 『痛いっ! うううううぅ……』 確かな手応え。「バーカ」は急所を蹴られて、うずくまってしまった。 キンタマリーア 『うはうはうは、遂に来たぞ、快楽のその時………』 |
||
■正義の騎士 ガンバルジャン登場! | ||
キンタマリーアは、イボだらけの手を、ぐーっと伸ばしてきた。 その時、「えいっ!」という掛け声とともに、何かがキラリと光った。 すると、キンタマリーアの手のイボがボロボロボロ・・・・・・・・・ ハッとして振り向いたナノヨ姫の目が輝いた。 ナノヨ姫 『あら、私のガンバルジャン!』 何と、ガンバルジャンの剣が、大きく弧を描いたのであった。 ガンバルジャン 『ナノヨ様は、確かに、私のガンバルジャンと言ってくれた!』 ナノヨ姫 『素敵よ!ガンバルジャン!』 ナノヨ姫 『あら、どうしたの、ガンバルジャン。森の中にいるのは、私とあなただけなのよ。 ナノヨ姫は、ガンバルジャンの手をとり、樫の大木に寄りかかった。瞳を閉じた ガンバルジャンは、ナノヨ姫の肩に、そろそろと手を回し、固くこわばった顔を近づけていく。 ガンバルジャン 『あいたたたたたっ!うーん。』 ガンバルジャンは突然の痛みに大声をあげた。 オカーマ 『ぺっ、ぺっ、何だこれは?ああ気持ち悪い。』 木の根元に潜んでいたオカーマが、焦って、ガンバルジャンの二の腕に食らいつ オカーマ 『ちくしょう!ドジをふんじまった。こうなったら何でもいいから、死んでも離すものか!』 ♪剣をとったら、王国一の、夢も大きな、正義の剣士・・・・・・・♪ オカーマ 『いやだ、いやだ、いやだよう。ベラベラベラ。離せ、おろせ、こんちくしょう!』 ガンバルジャンは、左手でサッと剣を抜くと、持ち上げたオカーマのお尻を、 オカーマ 『おかぁーさま、許してー!』 と言ったかと思うと、 オカーマ『やったな、こんちくしょう!ええいっ!これでもかー!』 ギリギリギリと噛み付いた歯に、更に力を加えた。 ガンバルジャン 『い、いたいっ!うーん、これでもか、これでもか。』 今度は、ガンバルジャンが、オカーマの鼻の穴を、コチョコチョコチョ。 オカーマ 『は、は、はっくしょーん!』 口をパクリと開けたオカーマは、木の根元にドシーン。おまけに、 ナノヨ姫 『ようやく、二人きりになれたわねえ。ガンバルジャン。』 ガンバルジャンは、積極的にナノヨ姫の手をとると、さっそく引き寄せ、あまーく、あつーく、 |
||
■人の恋路を邪魔する者は・・・・・ | ||
何と、その影は、槍をかついでやってくるノンキホーテーであった。 ノンキホーテー『あーあ、ひでえもんだ、だんな様は。いつまでたっても、戻って 来やしないんだから。 うっふっふっふっ、それほどまでにナノヨ様のことが、好き でたまらんということでやんすか。 お若いことで・・・・・』 さて、このノンキホーテーなる男。いつも長い槍を片手に、ノソノソとガンバルジャンに従う、太っちょの家来なのだが、 年の功で、時折、息子のように若いガンバルジャンをからかったりしては、カリカリさせていたのである。 槍の腕前は、王国でも五本の指に入るほどであったが、ガンバルジャンは、さほど買ってはいなかった。 よって、スワッ一大事という時になると、置いてきぼりをくい、大勢が決した時に、ノソノソとやって来る、 言わば、ヤボ天だったのである。 ノンキホーテー 『ギョギョッ!あんれ、まぁー。二人ともいいことしちゃってー!』 この五十男。あまりにも生々しいシーンに、体が小刻みに震えてしまった。 ちゃっかりナノヨ姫は、ガンバルジャンほどは、のぼせてはいなかった。 ナノヨ姫 『あら、あなたは、ノンキホーテー。どうしてそんなところで、もじもじしているの?』 ノンキホーテー『へぇー、そのー・・・・・』 ナノヨ姫『どうしたのよ!はっきり言ってちょうだい!』 ノンキホーテー『でありますが、そのー、邪魔しては悪いと思いましてー。へぇー。』 ガンバルジャン『こらっ!ノンキホーテー、現に邪魔をしているではないか。さっさと消えうせろ!』 ナノヨ姫『あら、いいではありませんか。折角駆けつけてくれたのですから・・・・・』 ガンバルジャン『ナノヨ様、私がいるではありませんか、そんな!』と、プゥーッとふくれる。 ナノヨ姫『いやあねぇー、プリプリしないでよ、ガンバルジャン。あなたは勿論大切な方なのよ。』 という具合に、剣をとっては王国一のガンバルジャンも、少々、堅物過ぎて、 ちゃっかりナノヨ姫には、手も足も出ないという体たらく。 諸君!こんなわがままなナノヨ姫を相手にすることはやめて、もっと楽に、のびのびしたらと思わんですかな? まあ、そこがガンバルジャンのいいところなんで、そこのところをナノヨ姫も、ちゃーんと解っていたのであります。 さて、とにもかくにも、身分高く、美しいナノヨ姫のまわりは、いつもドキドキ、 ハラハラの連続。気をもむことしきり・・・・・なのであった。 |
||
- つづく - |